市政レポートNO.11(鳥羽市:入湯税、尾鷲市:温浴施設)
<鳥羽市「入湯税」・尾鷲市「海洋深層水:温浴施設」の視察調査報告>
日 時 平成22年3月30日(火)~31日(水)
◎3月30日(火)「鳥羽市入湯税」
S39~50年度では入湯税課税(条例)の時期もあったが諸事情により廃止をされた。
H16年に温泉源泉に関する不法表示が全国的に問題になり、鳥羽市でもH17年度市議会定例会で取り上げられ、H18年度に旅館組合・観光協会に打診し、入湯税課税に関し、旅館業を営む経営者との7回の協議により、観光施策5割・源泉保護3割・環境衛生1割・消防1割に財源充当をすることとなり、H19年度課税に至った。(財源充当に関し要綱作成)
各施策実施にあたり、現行の施策への充当ではなく「新たな施策」(新)観光施策プラン策定・新たな見やすい観光看板・新規消防車両配置等の実施が求められている。
現在、納税に関して事業者からの苦情や大きな問題もなく運用されており、入湯税が明確な方針のもと予算執行がされているからと考えられる。
鳥羽市は国際観光都市としてのまちづくりが最重要課題であり、目的税である
この件に関し2月に新聞報道され、自治体から何件かの問い合わせがあったが、視察は今回が初めて。
課税額150円/人(12歳未満・学校行事等は免除規定有)
入湯税の歳入額
H19(1億6793万円)、H20(1億8780万円)
H21(1億8744万円)
源泉保護に関しては、事業者で「鳥羽市温泉振興協会」を結成し、そこから各事業者へ還元をしている。
この協会は、観光協会内部にあったが、H22年度から、新たな組織を結成し還元等の事務を行う計画である。
鳥羽市から協会へ3割を還元し、協会から内事業者自身の「源泉42円」、源泉からタンクで運ぶ「運び湯32円」である。(運び湯:鳥羽市内・榊原温泉から)
還元額の違いは、源泉施設の維持管理のため。
3割の還元額と源泉42円(3割であれば差額3円)、運び湯32円(差額13円)の差額が、協会の事業費・事務費になる。
観光施策を再認識して観光課を独立させたのも昨年である。
組織上は商工観光課として配置をされてきたが、独立させ最重要課題として「観光都市:鳥羽」明確な位置付けをした。
課内には、観光施策・観光振興の2係が配置されその職務に当たっている。
21年度鳥羽市観光基本計画前期アクションプログラムは、入湯税を財源とした計画。新規消防車購入の際にも財源とした。
入湯税はその使用使途を明確にした事は温泉施設事業者の納税等にも説明責任が果たせる。
入湯税の観光施策5割は、誘客・集客の確保に欠かせない貴重な財源であり果たすべき役割は大きい。
◎3月31日(水)「夢古道おわせ」海洋深層水を利用した温浴施設
海洋深層水を利用した温浴施設等は、紆余曲折がある現在に至っている。
施設整備に関して尾鷲市からの支援があったが、運営に関し積極的な支援が受けれないとわかると、商工会議所内で何十回にわたる協議議がされ、市民から出資金を募り55名の株主「2865万円」の資本が集まり運営されることとなった。
初年度の18年度はコンサル業務等に支出が集中し「損失670万円」を計上。
19度前期は支払いが困難になるほど一時経営が危ぶまれたが、1~3月で持ち直し収支がプラスに転換したが2000万円の損失。
現在では現金収支として何とか出来る状態になり、利益が出るようになったが、繰越利益剰余金が出るまでには至っていない。
「温浴施設」
H20年4月に待望の海洋深層水を利用した温浴施設がオープンし、赤字解消として人脈や職員の創意工夫で手作りで様々なものを作り、入浴券も事前に販売し現金を集めた。
「温浴施設(海洋深層水)お風呂」は、コンサル業者が予測した集客数を上回っている。H19・20年度で利用者7万3千人(目標6万5千人)大きく目標を上回る。
温泉発掘も最初の計画にあったが、仮に温泉源泉を掘りあてても、どこにでもある施設になっていたかもしれない。
法により「海洋深層水の効能効果」を表示はできないが、海洋深層水であること自体が集客・誘客の要素になっている。
現在、海洋深層水の施設のトラブル発生で「ニガリ」で対応しているが、新たな集客のために、以前から行っていた「世界遺産風呂」と銘打った「尾鷲ヒノキ」をお風呂に浮かべ対策を図っている。
世界遺産風呂は、国内の温浴施設が着目し、当市から尾鷲のヒノキを送り全国では約70箇所で展開。
「お母ちゃんのランチバイキング」
熊野古道が社会的に認知をされるようになり、ボランティアで炊き出し等のグループがいくつかでき、そこへ呼びかけをして3団体が応じた。
条件として、(1)何らかの法人組織結成
(2)厨房を持つこと
(3)テナント料として売り上げの2割
この3点を示し、3団体中、NPO法人1団体、企業組合2団体である。
お母さん達が頑張っているのを見たお父さんたちも徐々に協力的になった。
厨房の皿洗い、3団体で受け持つのでバイキングしない日もあり、尾鷲の食材をメインにしているのでその作業協力(農作業等)も始まった。(視察当日、実際にお父さんが皿洗い姿を拝見)
新たなコミュニティの構築・まちの活性化等、副次的な効果も表れている。
平均利用者数80~90名/日、3団体の平均年齢64歳
テナント料H20年度約400万円
バイキングでは「尾鷲にしかないもの」「尾鷲で普通と思われていても外から普通でない」と思われているものに着目した。
市内で「魚御飯」でも鯛やその他の魚類、単にサンマ鮨と言っても背開き・腹開き等、地区で調理方法に違いがあり、あえて統一をしないようにしている。
「塩ソフト」もヒット作の一つ
海洋深層水からできた塩をソフトにかけるだけだが、これがヒット商品になるとは思ってもいなかった。
お風呂のカウンターで販売をしているので、昨夏には、お風呂か塩ソフトの客かわかならい状況もあった。
16000本/年:約440万円
「その他」
・商工会議所から派遣職員(視察説明者)が1名いるが、経営指導員の
資格は持っていても、実際に経営に携わることはないので、経営や
まちづくりの実務研修として大きな意味がある
・「夢古道おわせ」の年商は「約1億2000万円」
市長のの交代等紆余曲折があった。
前市長は、この施設に否定的であったが、現市長は自らが「三日一魚」をブログにする等、尾鷲の特産物尾販路拡大に積極的な姿勢を見せ、理解をしていると考えている。
「赤字の補填は市からされない。」ので「絶対に失敗が許されない。」事業と認識をしている。
「総括」
・両市とも「やる気・本気・熱意」が伝わってきた。
・鳥羽市の入湯税の観光施策・源泉保護・環境衛生・消防への財源充当は、
桑名市も考える必要がある。
・尾鷲市の「夢古道おわせ」温浴施設等の取り組みも参考となるべきこと
が多い。
地域資源活用による「観光施策・海洋深層水温浴施設・地域まちづくり」 は、多度の健康増進施設の民の運営・発想も視野にいれ推進すべきでは
ないかと考える。